札幌芸術の森・野外美術館での修復
屋外彫刻(パブリックアート)の修復に関する問題とは?
屋外設置作品は、風雨による経年劣化が不可避であり、適時適切なメンテナンスや補修が必要です。
しかしながら、以下の理由から、なかなか作品のメンテナンスができていません。
その結果、著しく汚損したり、危険な状態になっている作品も少なくありません;
・財政的な事情から予算が措置できない
・著作権者(作品の製作者やその権利の継承者)の連絡先が不明
・適切な作品の修復業者がわからない。どのように修復するのが適切かわからない
・法律面(著作権等)で本当にそれを実施して良いのか、わからない。
これら問題により、作品の修復を実現することが困難なケースが少なくありません。
また、自治体の担当者の方について言えば、その必要性のロジックについて、
「どのように議会や市民等に説明すれば良いか?」
この点について頭を悩ませているケースも多々あります。
このような問題や課題について、弊社SDアートは、
自治体やアーティスト、関係業者などと調整し、修復を実現してきました。
以下は、問題を解決し、修復・メンテナンスを実現した屋外彫刻の事例です。
近年手がけた3つの事例をご紹介します。
実績について
1、ダニ・カラヴァン 《隠された庭への道》@札幌芸術の森野外美術館(2024年実施)
環境彫刻家の第一人者であるダニ・カラヴァンの代表作の一つがこの芸術の森の《隠された庭への道》。
設置から20年以上が経過し、その白さが美しかった作品は、経年劣化により、表面が黒ずむなど汚損が目立つ形に。
また、歩道等に亀裂が入るなど、鑑賞者にとって危険がある箇所も。こういった点を鑑み綜合的な補修を実施。
Before
ホワイトコンクリートで構成される全長220メートルにわたる環境彫刻。
これらのコンクリート部分が、長年の降雨等により黒ずんでしまい、鑑賞に耐えられない状態。
修復作業
主として水洗いによる表面の洗浄を行い、カビ等を除去。殺菌し、含浸剤等を塗布することにより、作品の白さを取り戻す。
After
全体的に白さを取り戻し、作品の美観が蘇った。ただし、予算の都合等から作品設置当初の白さにまでは戻らなかった。今後更なる調査・検討が必要。
また、金箔等の貼付箇所の修復については、予算面等の問題から実施しなかった。
上記の課題があるが、長年黒ずんでいた作品について、最低限の修復を実現し、約20年以上ぶりに作品に輝きが戻った。
2、マルタ・パン 《浮かぶ彫刻・札幌》@札幌芸術の森野外美術館(2023年実施)
札幌芸術の森・野外美術館の玄関口に浮かぶ3つの白いキューブ。
芸森の顔とも言える作品の《浮かぶ彫刻・札幌》。設置から40年ほどが経過し、作品にはさまざまなダメージが蓄積しており、定期的な補修が必要となっている。
Before
作品に亀裂が入るなど、浸水してしまっていた状況。
また水に浸かっている部分については、表面が劣化しコーティングが剥落している状態。
After
内部の調査や表面への塗料塗布等を行うなど修復を実施。
これまで長年2個しか浮いていなかった作品が、ようやく3つの姿で湖面に浮かぶ状態を実現。
3、佐藤忠良 《翔韻》@仙台国際空港(2023年実施)
宮城県出身の彫刻家・佐藤忠良のシンボルモニュメント。国際空港の玄関口であるこのアート作品であることから、その顔として美観の担保が必要であることから、今回の修復を実施。
Before
震災時に海水を被ってしまったこと、また、鳥のフンが作品に数多く付着していたことから、著しく劣化。
あまりにも痛ましい状態。
After
2日あまりで修復完了。元の美しさを実現。
他にも、
・飯田善國《大地からの閃光》札幌芸術の森 ステンレス
・新宮晋《雲の牧場》札幌芸術の森 帆布
・佐藤忠良《蝦夷鹿》 ブロンズ
・ダニ・カラヴァン《マアヤン》宮城県美術館 ホワイトコンクリート
・舟越保武《LOLA》 ブロンズ
・山本正道《海からの風》 瓦など
など、数多くの彫刻作品の修復やメンテナンスを行なってまいりました。
また、屋外彫刻やパブリックアートの作品調査についても数多く行なっています。
特に自治体の方から多くのご相談をいただいています。
お困りでしたら以下よりお問い合わせの上、ご相談を承ります。
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