前回、彫刻の作り方について、4つの方法をご紹介しました。
再掲すると、以下の通りです;
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① カービング:大理石や木などを彫っていく彫刻(引き算)
② モデリング:粘土や土などを使って型を作る彫刻(足し算)
③ キャスティング:ブロンズ等の金属などで鋳造する彫刻(割り算)
④ アセンブリング:鉄やダンボール、プラスチックなどを使って組み立てていく彫刻(掛け算)
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この中で、③のキャスティングについては、その特徴などから、さまざまな問題を孕んで議論になってきました。
その議論のひとつが「死後鋳造」(Posthumuos Casting)についてです。
死後鋳造とは、作家が亡くなった後に鋳造される作品のことです。
作家が亡くなった後なのに、なぜ彫刻を鋳造できるのか?
その理由が「型」の存在です。
この辺りの詳細は、前記事の彫刻の4つの作り方とは?をご覧いただけたらと思いますが、
この型が存在していれば、作家が亡くなった後でも、鋳造することが可能なわけです。
このような「死後鋳造」を行う代表的な彫刻家が、オーギュスト・ロダンです。
当時、19世紀のフランスで活躍し、世界的な彫刻家となったロダンは、
先述した「②モデリング」という方法で、粘土を用いて、彫刻の原型を制作しました。
このモデリングによって出来上がった粘土像を元にしてつくられるのが、「石膏原型」と呼ばれる「型」です。なお、この作業は、基本的には、作家自身が行うものではなく、鋳造所の職人さんなどに頼んでやってもらう作業になります。
この型から「鋳型」を制作し、そこにブロンズなどの金属を流し込むことで生まれるのが、ブロンズ彫刻です。このプロセスも鋳造所が行うものです。
したがって、ブロンズ彫刻というのは、
・作家本人が行うモデリング
・鋳造所が行うキャスティング
というように、工程が分かれていたわけです。
非常に工業的で、分業的な制作過程を経て生まれてくるわけです。
この鋳造のプロセスについては、やはり、仕上がりの感じや、色つけ(パティナといいます)などが鋳造所によって、異なります。
したがって、慣れ親しんだ、ブロンズ鋳造を得意とする鋳造所に依頼することになります。
ロダンが生前使っていた鋳造所として有名なのが、Alexis Roudier(アレクシス・ルーディエ)といった鋳造所です。
実際、この鋳造所の場所によって、オークションで取引される金額などが変わったり、価格付の判断基準になったりします。
このように、ブロンズ彫刻は、モデリングとキャスティングを行う者が、基本は、別々になります。
作家が制作した型があれば、亡くなった後でも鋳造所が鋳造すれば、作品を生み出せるわけです。
これが死後鋳造の仕組みです。
そうすると、ここで疑問が湧いてくるわけです。
「作家が鋳造された作品に目を通さないってことは、本当に、その人が制作した作品といえるの?」
ここが、死後鋳造品の「問題」となるわけです。
しかし、ロダンは、自らの作品が死後も鋳造され、世界中に広まっていくことを、よしとしました。
この「遺言」に基づき、フランス国立ロダン美術館は、今でもこのようにしてロダンの死後鋳造作品を販売しています。
そして、弊社は、このような作品を販売できる日本における正規のエージェントになっているのです。
また、このように「型」があれば、「同じ作品を複数、鋳造することができる」わけです。
したがって、極端に言えば、同じ「芸術作品」が、100体、存在することも可能です。
(現に、《考える人》などは、世界中に数十点、同じものが存在します)
それゆえ「本物と、レプリカの違いはなんなのか?」という議論を惹起するわけです。
これらを明確にするために、フランス国立ロダン美術館は、鋳造点数について明確に定めています。
すなわち、
「一つの型から作っていいのは、12点まで!」
これを、フランス国内関連法に定めています。
ちなみに、この12点の内訳ですが、
・8点までは、個人コレクターなどへの販売可能点数で、エディション1/8、2/8・・・7/8、8/8
・4点については、転売などが想定されない美術館等の施設に販売可能で、エディションⅠ/Ⅳ、Ⅱ/Ⅳ、Ⅲ/Ⅳ、Ⅳ/Ⅳ
このように分かれています。
ということで、彫刻の死後鋳造とオリジナリティについて解説しました。
ブロンズ彫刻の特徴は、このように、「型」があることが理由で、他の方法とは別の「問題」が生じてくるのです。
ただ、一方で、これを「問題」と捉えるか「特長」と捉えるかは、考え方次第という気がします。
この特徴を活かして、作品へと昇華していくことで、また新たな「彫刻」が生まれること。
そのような捉え方が、新しい芸術を開くのではないかと思います。
*最後に・・・・
彫刻をさらに楽しく鑑賞したいという方はぜひ、拙著をお読みいただけたらと思います。