横浜を舞台にした童謡「赤い靴」。一度は耳にしたことがあるかと思いますが、
この赤い靴の女の子をモチーフとした銅像が、横浜の山下公園に設置されています。
実は、この銅像の制作者が、彫刻家・山本正道さんです。
今回はこの山本正道さんについて紹介します。
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彫刻家・山本正道とは?
山本正道は、1941年生まれ。
必要最小限の形だけを残し、大小の比例は自在にし全体の造形的バランスをとる
「情景彫刻表現」を展開したことにより、高い評価を受けました。
それまでは具象彫刻でありかつ、人物をモチーフとした彫刻が主流だったため、風景を彫刻にする、ということ自体が非常に先駆的な取り組みでした。
しかし一方で、冒頭に述べたような、少女像などの具象彫刻についても多数制作しており、
日本各地のパブリックスペースで少女像が設置されています。
山本正道は、東京芸大に進んだのち、イタリアに留学。
風の彫刻家として名高く、イタリアの彫刻界のスターでもある、ファッツィーニに学びました。
この時から、イタリア滞在中に出会った遺跡や廃墟、また、のちに渡米した際に出会ったインディアンの遺跡などに感化され、自らの表現の幅を拡大させ、独自の彫刻表現へと昇華させていきました。
そのひとつの結実が、風景彫刻でした。
この風景彫刻を始めとする独特な彫刻表現は、新制作協会という場所を通じて親交があった、彫刻家・佐藤忠良にも絶賛されました(二人は、お互いに作家としてリスペクトしていた仲でもありました)。
山本正道自身は、70歳半ばを超えた今でも精力的に制作を続け、新制作展にも毎年出品しています。
山本正道の作品
このように、ご覧いただければわかりますが非常に制作の幅が広い作家です。
抽象表現だけでなく、具象表現も得意とし、またそれを融合した形の作品を作り続けています。
ちなみにこの少女像は、立川市若葉会館、山口県宇部市などの屋外スペースにも設置されており、また、同様の少女をモチーフとした作品は日本各地に設置されています。
冒頭の抽象作品は、軽井沢のセゾン美術館の屋外スペースに設置されていますが、それ以外にも、仙台市彫刻のあるまちづくりの設置作品「風の音」などをはじめとして全国のパブリックスペースで見ることができます。
※パブリックアートとは?パブリックアートの歴史とパブリックアートの普及
(https://sdart.jp/archives/480)
山本正道の展覧会
1999年〜2000年にかけて、弊社の前身の会社が主催となり、山本正道の全国巡回展をおこないました。
宮城県美術館(1999年10月〜12月)、安田火災東郷青児美術館(2000年4月〜5月)、三重県立美術館(7月〜8月)、徳島県立近代美術館(9月〜10月)の4館で実施されました。
山本正道・略歴
1941年 京都市に生まれる
1967年 東京芸術大学彫刻科大学院を修了。第31回新制作協会展に初出品し、新作家賞受賞
1968年 イタリア政府給費留学生として渡伊。ローマ美術学校のペリクレ・フィッツィーニ教室で学ぶ(~71年)
1973年 新制作協会会員
1975年 第2回彫刻の森美術館大賞展
1976年 第5回平櫛田中賞
1977年 第5回長野市野外彫刻賞
1978年 第9回中原悌二郎賞優秀賞 フルブライト芸術部門交換研究員として渡米
1979年 横浜市山下公園に「赤い靴」設置
1983年 仙台市彫刻のあるまちづくり事業で「風の音」設置
1989年 第2回倉吉:緑の彫刻賞受賞
1995年 東京芸術大学美術学部彫刻科教授
1998年 第25回長野市野外彫刻賞受賞
1999年 山本正道展 宮城県美術館
2000年 第31回中原悌二朗賞受賞
2004年 第2回コンスタンティン・ブランクーシ賞大賞受賞
2005年 紫綬褒章受章
2009年 東京芸術大学教授を退任し、名誉教授。山本正道展ー風・記憶・かたちー 彫刻の森美術館、山本正道展 札幌芸術の森美術館