弊社SDアートが企画・協力として、2012年頃から進めてきた展覧会。
私にとっては、3つ目の展覧会オーガナイズです。
風と水の彫刻家・新宮晋先生の新作を中心とした展覧会です。
こちらの、2016年6月〜全国3美術館を巡回した「新宮晋の宇宙船」展。
この展覧会は、風と水の彫刻家と称される新宮晋が最新作を制作し挑んだ、大規模な巡回展です。
今回は、この世界的彫刻家の新宮晋さんについて少しご紹介します。
Contents
新宮晋とは?
1937年生まれ。風や水といった自然の力を利用した、動く彫刻を制作し世界的な彫刻家として認知されています。
特に近年では、イタリアやスペインなどヨーロッパを中心として彫刻設置のプロジェクトを多数実施。
日本では、2014年6月、兵庫県の有馬富士公園内の「新宮晋 風のミュージアム」がオープンするなど、さらに精力的に活動の場を広げています。
また、多数の絵本を執筆しており、「いちご」などのロング・ベストセラーに加え、近年では、ポップアップの絵本を世界数カ国で出版するなど、絵本の作者としても活躍しています。
さらに詳しい経歴は、Wikipediaや最新作のカタログに譲りますが、
美術界の生きるレジェンドとも言える存在として、日本の美術界に大きな影響を与え続けてきました。
新宮晋の作品(「新宮晋の宇宙船」展やその他パブリックアートより)
「作品を屋外に置いたのが、『風のアート』のきっかけだった」
新宮は、日本画壇を代表する画家である小磯良平の親戚でもあり、小学生の頃から絵を見てもらう関係にありました。
そのようなご縁もあり、画家を志した結果、東京芸大に入学し小磯教室で学びました。
その後、イタリアへ留学。その際に、冒頭の通り、絵画を屋外にぶら下げていたところ、
その景色にインスパイアされ、今の新宮の代名詞である「風の彫刻」が生まれることになりました。
日本にも本当に多くの屋外空間に作品が設置されていますが、これらに加え、ヨーロッパやアメリカ、トルコなどなど、世界中に新宮晋の彫刻作品が設置されています。
新宮晋の持つ言葉の力
作品以外でも、新宮先生が素晴らしいと思う点は、その文章の力、言葉の力です。
本展覧会中にも、新宮がこれまでアーティストとして、自然を観察し造形してきたことが一目でわかるような言葉が、作品と共に並んでいます。
”空気は、気圧を一定に保つために恐ろしいほどの几帳面さで移動する。
それが風だ。風は地球上のすべてのかたちを造形する。”
”夜空を眺めていると、無限に広がる空間と何億光年の時の流れの中で
押しつぶされそうになる。”
”背がのびるにしたがって茎は太く強くなる。地上の変化は地下に伝えられ
根は強化される。自然の構造計算には無駄がない。”
(「新宮晋の宇宙船」カタログより引用)
このような言葉は展覧会場の一コマで、今回の展覧会のカタログにも記載されている言葉ですが、
これ以外にも、「いちご」の絵本など多くの絵本や書籍を出版しており、その中にも非常に印象深い言葉たちが並んでいます。
私個人的には、このような”詩的な表現”に心打たれ、作品と共に鑑賞することで、
作品に対するイメージが大きく膨らんでいく経験をすることができました。
自身初の国内での大規模な巡回展「新宮晋の宇宙船」展
さて、ここでは、長崎県美術館、横須賀美術館、兵庫県立美術館で行われた展示風景について、
可能な範囲で写真と共にご紹介いたします。
長崎県美術館(2016年6月〜7月)
横須賀美術館(2016年11月〜12月)
兵庫県立美術館(2017年3月〜5月)
「新宮晋の宇宙船」展 のカタログについて
こちらの巡回展のカタログは、私たちが運営する以下ショップから購入可能です。
※一般非売品
https://choukoku.thebase.in/items/6617916
新宮晋のこれから
2017年で80歳となる新宮の頭の中には、まだまだ沢山のアイディア、構想が埋まっているようです。
これまで描いてきた構想の中で、私が最も関心があるプロジェクトがあります。
それは、
「Breathing Earth 呼吸する地球」
です。
自然エネルギーだけで自活する共同体を、アートを通じて実現するという夢のコミュニティー。
この夢のようなプロジェクトが実現するかもしれない。
まだ詳細が決まっていないとのことですので、公表はできませんが、
この夢のようなプロジェクトが実現することを心から応援しています。
これ以外にも、
兵庫県の「新宮晋 風のミュージアム」では年に数回、能などの舞台や、いちごエキスプレスなどのミュージカルなどが行われています。今後も日本だけではなく、世界を舞台に引き続き活躍されていく姿を見ることができそうです。
巡回展を終えて
兵庫県立美術館での展示を経て、約1年にわたる巡回展が終了しました。
新宮先生の地元であり、また、多くの作品が設置されている、馴染みの深い場所。
そして、兵庫県立美術館の建築者として、世界的に有名な建築家・安藤忠雄。
実は、新宮さんとは旧知の仲だそうです。
兵庫県立美術館は、他の美術館と比べ天井高が非常に高く、また、コンクリートを打ち付けたその重厚な作りの建築物は、これまで展示してきた美術館と大きく違いましたが、
その空間を見事に新宮芸術が彩り、素晴らしい展示になりました。
先生がオープン当日におっしゃった言葉が私の中ですごく印象に残っています。
「芸術のチカラを信じて、進んでいこう」
私もこの言葉を胸に、今後も歩んでいこうと思います。
素晴らしい1年間の旅路をご一緒してくださった、本当に多くの方々に感謝します。
(2017年5月28日追記)