私たちの事業のひとつとして、アーティストのマネジメントを行っています。
アーティストマネジメントには、本当に様々な考え方があるようですが、
私が現在行っている仕事内容に照らして、
具体的に、
「アーティストマネジメントの仕事とは何をしているのか?」
を書いてみたいと思います。
Contents
アーティストとは?
本題に入る前に、まず、ここでのアーティストの定義・カテゴリーについては、
・芸術家としてのアーティスト(画家、彫刻家、映像作家、写真家、華道家などなど)
・ミュージシャンとしてのアーティスト(歌手)
という2つの側面で捉えていただけたらと思います。
「芸術家と歌手ではだいぶ違うのではないか?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私の経験上では、本質的な部分は一緒です。
ですので、芸術に興味のある方は芸術家としてのアーティストを念頭に、
ミュージシャンとしてのアーティストに興味がある方はそれを念頭にして読み進めていただけたらと思います。
アーティスト・マネージメントの3つの仕事
私が思うに、大きく分けて3つあります。
① アーティストをひろめる
アーティストマネジメントを行うにあたっての大きな目的のひとつは、
「アーティストをひろめること」
です。
言い換えれば、
プロモーション、PRなどのマーケティングやブランディングをどのように行っていくか、
ということでもあります。
・歌手であれば、CD販売やライブの集客目標をどのように達成していくのか?
・画家であれば、制作した作品をどのように販売してくのか?
・そのような目標を達成するためのホームページやSNSをどのように表現してくのか?
・多くの人々に見ていただくために、どんな方法を採用するのが最も効果的なのか?
などなど、「ひろめていく」ための活動を行っていくことが、何よりも求められます。
そのためには、アーティストの個性や作風などを勘案して、
・今後のビジョンやミッションといった活動の目的
・ビジョンを実現するための戦略
・具体的に目標を達成していくためのプラン
などを共に検討しながら、つくりあげていきます。
その上で、このプランにそって、PDCAを回していくのです。
例えば、私の場合は、もともと経営学科の出身かつ。事業会社にいた経験があるため、
この「ひろめる」活動の部分は、競争戦略やマーケティング理論を大いに参考にして活用しています。
加えて、マーケティングについては、
美術品といった高額なものを販売してきた独自の経験やノウハウといった部分から
歌手のマネジメント経験に基づくライブ集客やCD販売への活用経験
まで、幅広いアーティストのマネジメント経験から、様々な種類のアーティストにも活用な原理原則を自分なりに持ちながら、アーティストの問題解決を行っています。
この際に気をつけていることは2つです。
・具体的で数値で計測可能な目標や行動に「分解」し、達成可能なステップをつくること
・一方で、全体観(政治経済、世の流れ、プロジェクト全体の流れなど)を常に意識しながら進めていくこと
これは、その場その場のアイディアを思いつきで実行しがちなアーティストとは対極の役割と言えるかもしれません。
アイディア自体がどんなによくても、全体の流れや大局から見てそぐわない、微妙なものについては容赦なく切り捨てることも多々有ります。
そして、森も木も見ながら、全体をうまく調整していくことで、アーティストを広める活動を推進していく。
これがアーティストマネジメントの最も重要な役割のひとつです。
② アーティストを高める
ビジョンやプランを策定してひろめることが上手くいったとしても、
「作品内容」「品質」「コンテンツクオリティ」が伴わなければひとはすぐに離れて行ってしまいます。
(逆もしかりです)
特に、アートというものは、ひとの評価が分かれるものが多いと言えます。
万人にとってよいアート、よい作品というのは、ありえません。
しかし、方向性や作風がどうであろうと、アーティストは常に作品を制作し続けていくことが求められます。
この制作を続けていくというのは、想像以上に大変なことです。
アーティストがアーティストたり得るのは、作品をつくり続け、発表しつづけることでしか、実現できません。
そして、このアーティスト活動を続けていくには、人間として研鑽し続ける態度が不可欠です。
・広げて
・深めて
・腹に落とし、そして、
・知恵にし、叡智にしていく。
アーティストの活動意義がそこにあると言えます。
自らの作品を通じて、アーティストとして、人間の生成発展を実現していくこと。
アーティストにはこのような深遠なる役割があると信じています。
中途半端な覚悟や作品では到底無理です。
従って、作品を作り続けていくには、その人自らの絶え間ない成長が不可欠です。
アーティストマネジメントをする者は、
その「アーティストの成長を促進するためのヒント」や、
「課題、体験」などを投げかけ、ともに検討し続けることが必要です。
このような活動を継続することにより、アーティストとしての価値を高め、
そして、人々の心を動かすものを届け続けていくことができると考えます。
③アーティストに専念させる
以上のような活動を継続していると、非常に多くの雑多なモノゴトが、目の前に山積みされていきます。
「アーティストとしての活動には直接関与しない、アーティストが直接やるべきではないこと」
が本当にたくさんあるものです。
アーティストは、本来このような活動に時間を割くべきではありません。
創造性を高めるための活動に注力し、作品を制作し表現し続けることが本来の役割です。
しかし、制作の依頼が増えれば増えるほど、
それに比例して、契約、交渉、お金のこと、事務書類、メールなどなどが増えてきます。
それらに対して、アーティストの代理人として、
適切に、即座に、対応していくことが、アーティストマネジメントの仕事のひとつです。
いわゆる雑用とも呼べる仕事も多いです。
これらをスピード感を持って、真摯に、的確に、計画性をもって次々と対応していく。
これがアーティストマネジメントの仕事の大事なファクターのひとつです。
なので、事務処理能力の高さ、これは不可欠です。
膨大な量を目の前にしても、あきらめずに果敢に立ち向かっていける気力と体力と知力が必要です。
さらに、
海外とのコンタクトを考えれば最低、英語ができることが不可欠であり、
さらにもう一言語を操ることが望ましいとされます。
また、芸術に詳しい弁護士や税理士といったプロフェッショナルなチームを擁することができればさらに業務が円滑になるでしょう。
私も通常10プロジェクトぐらいを並行してマネジメントしていますが、交渉や契約、税務関連業務などは専門家がいないとなかなか太刀打ちできるものではないなと感じます。
アーティストに専念させるためにも、様々なスキルや経験が必要になってくるのです。
以上、アーティストマネジメントの仕事を3つの観点から描いてみました。
この記事が多くのアーティストの方やそのマネジメントにたずさわりたいと考えている方のお役に立てば幸いです。
この記事は大変多くの方にお読みいただいているようです。
特に以下のような方々からお問い合わせを多くいただいております;
・画家や彫刻家といった芸術家
・音楽家、ミュージシャン
・華道や書道家といったアーティスト
・写真家、デザイナーなどのクリエイター
・上記の方を支える友人や近しい方々
▼ご相談、詳細は以下をご覧頂いた上で、お問い合わせください。
↓
https://japan.sdart.jp/coaching
※アーティストの方は、お問い合わせ時にこれまでの作品のポートフォリオや、ご経歴等がわかるwebサイト等の情報をご準備くださるようお願いいたします。
※その他、よくお問い合わせをいただくのが個展開催等のマネジメントです。詳しくは以下の記事をご覧ください;
■アートマネジメントの仕事とは?「まだ無い仕事」を解説
https://sdart.jp/archives/3835
■アーティストとして生きるための3つのヒント〜アーティストのための「コンサルティング・セッション」
https://sdart.jp/archives/2340
■【10,000文字・決定版】ゼロから分かる!「個展の開き方」を解説!
https://sdart.jp/archives/2080
■展覧会や個展を企画する方法【展覧会・個展の開催についてお悩みの方へ】
https://sdart.jp/archives/1789
アートプロデューサーとアートコンサルタント
さて、余談ではありますが、
・「アートプロデューサー」や
・「アートコンサルタント」
という言葉からもこの記事に辿り着いていただいているようです。
このような言葉については、明確な定義や違いがわかりにくい言葉なのだと思います。
簡単にですが、私が思うこれらの用語について、私見を記すとするのであれば、以下のようになります;
・アートプロデューサーとは、アーティストマネジメントの上位概念(抽象概念)であり、マネジメントよりも更に幅広い範囲でアーティストと関わっていく仕事だと思っています。
その段階には、アートプロデューサー>アートディレクター>アートマネジメント、という役割の段階があり、違いがあると思っています。
・経営資源(人、物、金、情報など)を自ら取ってきて、
・それらを配分し、
・全体の行くべき方向性を提示する
これらを通じて、アーティストやステークホルダーを動かしていく。
アートプロデューサーはそんな仕事と定義しています。
・アートコンサルタントとは、
アートに関して総合的な知識、経験を持ち合わせている人で、
それを生かして「ブレーン」や「軍師」として、
その人やプロジェクトに寄り添う役割を担う人です。
主に、経験や情報にもとづくアドバイスや情報提供を通じて、問題解決していく人と定義しています。
アートコンサルタントは、手足を動かすというよりは、
これまで培ってきた「知恵」を用いて解決の方向性を提示するなどを通じて、アーティストのサポートを行います。
ですので、あくまで私の経験や認識のひとつとして上記の言葉を捉えていただけたらと思います。
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