「展覧会の企画ってどのように行っているのですか?」
最近、このような質問を受けることが多くなりました。
確かに、一般の人にはあまり馴染みのない仕事だろうと思います。
今回は、この展覧会企画の仕事について、
私の経験に基づきまとめてみました。
▼(参考)展覧会や個展を企画する方法
個人の方向けに、7つのステップで解説していますので、以下の記事もよろしければご覧ください。
Contents
展覧会を企画、開催決定するまでの大きな流れ
結論から言えば、以下のとおりの流れで行います;
①展覧会を行うアーティストを決定
→ ②展覧会の企画概要の決定
→ ③展覧会の企画書作成
→ ④各美術館へ企画書を持ち込み
→ ⑤各美術館による検討
→ ⑥開催決定
だいたい、以上のプロセスを経て、展覧会の開催を企図します。
弊社の大きな役割が、この立ち上げ〜開催決定までを、複数の美術館で取り付けることです。
簡単そうに聞こえるかもしれませんが、様々な要素が絡み合っているため、
開催を実現するまでには、本当に多くのハードルが存在します。
特に、彫刻展についてはあまりポピュラーではないため、なかなか開催実現のハードルが高いものが多いのが実情です。
海外作家の作品を持ってきて展覧会を行う場合
その中でも実現の難易度が特に高いものが、海外アーティストの展覧会です。
私自身が海外作家の展覧会を企画したのは、
2015年〜16年にわたって開催された「スペインの彫刻家 フリオ・ゴンサレス」展です。
※こちらについては、過去記事で紹介していますので、そちらをご覧いただければと思います。
スペインの彫刻家 フリオ・ゴンザレス/展覧会実現までの道のり
やはり、海外作家の作品を所蔵している美術館などから作品を借用して、日本に持ってくること、
そして、それを展示すること、というのは莫大な予算や日数、多くの人の協力が必要となります。
ゴンサレス展は、全国4美術館にて開催しましたが、
まず4会場で開催する合意を取り付けること自体に20年以上かかっていますし(といってもこのようなケースは非常に稀ですが笑)、
また、作品を借用してくるまでの交渉についても5年以上を要しています。
そして、作品借用が決定し、作品を輸送する段階になってからも本当に多くのやるべきことがあります。
例えば、
・作品貸出交渉
・契約締結交渉
・輸送手配
・クーリエのスケジュール調整・アテンド
・輸入時立会い
・各美術館への輸送、搬出入チェック・・・。
などなど、かなり大掛かりな作業になります。
現在も、あるフランスの彫刻家の展覧会を企画したいと思って動いていますが、
なかなか大掛かりな話ですので、まとめるのにまだまだ時間がかかりそうです。
▼展覧会企画に関するさらに詳しい記事はこちら↓
●展覧会や個展を企画する方法【展覧会・個展の開催についてお悩みの方へ】
https://sdart.jp/archives/1789
美術館が展覧会を決める基準
日本のトップアーティストと言えば、草間彌生さんです。
2017年に、六本木の国立新美術館で、この草間彌生さんの展覧会が開催されていました。
日本人として、世界的にももっとも有名なアーティストでしょう。
私も初日に伺いましたが、すごい人でした。
終わってみれば、52万人を動員したとのことで、すごい記録です。
参考までに昨年2016年の展覧会の入場者数のトップ20についてこちらの記事にまとめられているのですが、
1位は、国立新美術館で開催された「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」の66万7897人。
同館は2015年も「ルーヴル美術館展 日常を描く」で同様の約66万人を記録しています。
いずれにせよ、このランキングから何がわかるかと言うと、
「日本人は世界でも屈指の美術館好き」
「印象派を始めとするよく知られた名前が冠されているオルドマスターが好き」
ということです。
そしてその傾向は、ここ何十年も大きく変わっていませんでしたが、
近年では少しずつですが、現代美術に人が集まるようになってきています。
美術館も慈善事業ではありませんので、入館者数をもっとも大事な物差しのひとつとして掲げます。
ですので、海外から著名な作家の作品を毎年、日本に持ってきて展覧会を実施します。
そして、
スポンサーとして新聞社等のマスメディアがつくことにより、メディアが宣伝するなどした結果、
たくさんの方が美術館の企画展に足を運んでいるのはご存知の通りです。
もともと知名度が高かったり、人気がある作品やアーティストはさらに人気を呼ぶ一方で、
知名度が低く、「知る人ぞ知る良いアーティスト」というのは、美術館での展覧会を行うのは非常にハードルが高いのが現状です。
このように非常に両極端な現実がありますが、
弊社のような小さな会社は、
・歴史に残る(だろう)アーティストや知る人ぞ知る素晴らしいアーティストの作品を掘り出し、
・各美術館の審美眼がある学芸員の方々の理解と熱意に支えられ、
・複数の美術館での開催を実現する
という仕事になります。
人が入りにくいことが想定されるので、なかなか普通は美術館では企画が通りにくいです。
しかし、
・日本の美術館として扱う意義が大きく、
・教育的観点や研究等の観点から実現したい企画
・学芸員の方が実現に対して熱意を持っている
場合、実現するに至るのです。
このような企画というのは、
・観客動員ではない基準
が優先されるため、
日本の美術館としてやらねばならないという使命感から実施される場合が多いと感じます。
そしてそのような展覧会はやはり、動員数は多くない者の、大変深い感動に包まれて終わる形が多いと感じます。
私も日本人が日本人として感じられる芸術に対する美意識を更によくしていくことができるように、
知る人ぞ知る、素晴らしい展覧会をこれからも企画していきたいと思います。
そして、取り扱った作家や作品が、遠い将来かもしれませんが、歴史に残る財産として扱われることになれば、
こんなに嬉しいことはありません。
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