※以前、アメブロの方で書いていた内容を加筆修正して改めて、こちらのHPに掲載しています。

 

彫刻。

最近は、彫刻という言葉自体がとても珍しい言葉になってきているような気がします。

今日は、彫刻の特徴と、死後鋳造という彫刻ならではの「問題」について取り上げます。

 

彫刻は一つの原型から複数点鋳造可能

これまでの伝統的なブロンズで鋳造するような「彫刻」は、

「原型」という型を制作します。

この原型にブロンズを流し込んで作品を鋳造することになるのですが、

原型は再利用可能ですので、ブロンズをまた流し込むことにより、同じ作品を鋳造・制作することが可能です。

例えば、誰しもが知っているロダンの「考える人」。

東京・上野の国立西洋美術館の敷地内には、大きな「考える人」が設置されています。

また、フランスのロダン美術館にも同様の作品が設置されています。

このように、彫刻には「同じ作品が複数点存在することができる」という特徴があるのです。

この点は、世の中に1点しか存在しない絵画や木彫彫刻と最も違う点です。

 

原型を制作する彫刻の問題点とは?

1、偽造等のフェイクが、絵画に比べて流通しやすい

このような特徴から彫刻は偽造のターゲットになりやすいという問題があげられます。

原型を偽造し作品を大量に鋳造したり、本物の作品から型をとって鋳造する(いわゆる股抜き)などの手口があげられます。

驚くべきことに、鋳造所から悪徳業者に原型等を横流しするケースもかつてはあったそうです。

例えば、現にフランスでは、1900年代に入って、ロダンの作品の偽物が多く発見され問題となりました。

ロダンはこれまでの歴史上の彫刻家の中でも、群を抜いて多くの作品を制作してきた彫刻家として知られています。このように、作品数が多く価値が高い作家は、偽造等の対象にもなりやすいのです。

 

2、死後鋳造という問題

さて、偽造の他に、彫刻の問題として取り上げられやすいのが、

「死後鋳造(Posthumous casting)」

 

です。

死後鋳造とは聞きなれない言葉かもしれませんが、

要すれば、

「作家が亡くなった後に鋳造される彫刻作品」

のことです。

「え?作家が亡くなった後に、どうやって作品を鋳造するの?」

と思われるかもしれません。

が、前述した通り、(ブロンズ)彫刻は、「原型を制作する」というプロセスを経ます。

言い換えると、

「原型があれば、鋳造所に頼んでブロンズ作品を鋳造することができる」

わけです。

ブロンズ彫刻は、作家が自分でブロンズを型に流し込んで、作品を鋳造することはほとんどありません。

作家のパートナーとして必ず、「鋳造所の職人さん」が存在していて、

この職人さんたちの腕を借りて、最終的な作品をつくりあげていきます。

従って、原型を元にして、ブロンズ彫刻を鋳造するには、この職人さんの力が不可欠なわけです。

結果として、彫刻家がたとえ亡くなったとしても、腕がよい鋳造職人や、その技術を受け継いだ人々が存在していて、「原型」が残っている限り、彫刻を鋳造し続けることができるのです。

実際に、死後鋳造は欧米を中心に「オリジナリティーの問題」として議論が巻き起こってきました。

つまりそれは、「作者が(亡くなっているから)仕上がりをチェックできない作品を世に出すこと」が本当によいのかどうか、という議論です。

実際に、ポンポンのように、作家自身が遺言等で死後鋳造を行わないよう指示する場合があり、この死後鋳造が大きな問題となったこともありました。

( e.g)死後鋳造問題については、「フランソワ・ポンポンの死後鋳造問題」を参照)

しかし、このような死後鋳造の問題が起こること自体、彫刻という表現方法が、他の表現方法と異なる「特長」でもあるという言い方ができるかもしれません。

死後鋳造とロダン美術館のロダン作品販売

以上の問題に取り組み、そして一定の道筋をつけてきたのが、フランスのロダン美術館です。

乱造・偽造の問題については、1900年代に入りロダン作品が国際的に高い評価を受けるようになったのを機に大きくなっていきました。

1900年のパリ万博でロダンの大回顧展が行われて以降、ロダン作品の価格はさらに高騰し、彫刻の特徴と相まって、偽造品が多く出回った。ロダンは世界でも偽造品が多い作家Top10に入るとも言われています。

以上のような状況からフランス政府は彫刻に関して一定の規制を定め、対策をとるようになりました。

実は、このような問題に対処する必要になった背景として、
ロダンが生前、フランス政府に、ロダンの作品群をアトリエごと寄贈したのですが、これが現在のロダン美術館となりました。

そして、この時、ロダンは、制作した「石膏原型から死後も鋳造を行うことができる権利」をも付与したという事情がありました。

つまり、ロダンは「私が死んだ後も、私の作品を鋳造してください。私の作品が世界に普及するのであれば本望です」というように、「死後鋳造することを許可した」わけです。

この遺志を引き継ぎ、現在、ロダン美術館は、このロダンから寄贈された原型を基にして、GodardやCoubertinなどの鋳造所で作品を鋳造し、全世界で販売しているのです。

(この一環として弊社は日本におけるロダン美術館の総代理店(販売窓口)となっています)

しかし、上述の通り、オリジナリティ、死後鋳造に関する様々な問題があります。

そこで、フランス政府は作品の鋳造点数や鋳造にあたってのルールを法定しました。

つまり、フランス政府は、作品について「鋳造できる点数を制限する法律を定めた」のです。

例えば、1957年にはフランスの知的財産権に関する法律が定められ、彫刻に関連する事項が盛り込まれました。現在どのような規定になっているかというと、

「1/8から8/8については個人コレクター向けに販売可能」

「Ⅰ/ⅣからⅣ/Ⅳについては美術館や公共施設等の転売を意図しない施設向けに販売可能」

というように定められています。

つまり、

「ひとつの原型から12体までは鋳造してよいよ。それがオリジナル作品として認められるものですよ」

ということです。

日本でも多くの彫刻家は、このルールを踏襲しました。

オリジナルとReproduction(レプリカ・複製)の境目

以上のように、

12体を超えて制作された作品については、「Reproduction」(レプリカ・複製)とみなされ、その旨を作品に明示しなければならないとされています。

Reproduction(レプリカ・複製)については、Original(オリジナル)と明確な区別がなされ、たとえば税率もReproductionのVAT(日本の消費税に相当)は19.6%ですが、Originalについては5%であり、芸術作品としてのOriginal作品はその税率が軽減されるような決まりとなっています。

以上のように、ロダン美術館に関してはロダンが寄贈した原型を基に、作品の鋳造を行っており、フランス国内法により鋳造点数を規定・限定し、厳しい管理の下、作品を世界中に販売しているのです。

(ロダン美術館HP、Respecting Rodin’s moral rightを参照)

 

ロダンは自らの死後もその作品を多くの人々に見てほしいと願いました。

だからこそ、彼はその作品について、死後の鋳造について認め、この権利をロダン美術館に寄贈したのです。

これからも2017年にはロダンの死後100年となりました。

亡くなって100年が経った今も、本当にたくさんの人々に愛されているロダン。

これからも彼の作品が正しく後世に引き継がれていくサポートをしていきたいと思います。

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