オペラシティ初台
今回はイギリスの彫刻家、アントニー・ゴームリー(Antony Gormley:1950年8月30日-)をご紹介します。

 

現代のイギリスを代表する彫刻家であり、日本国内でもその作品が数多く所有されているゴームリー。

 

冒頭の写真は、初台のオペラシティに展示されている立像です。

人々が行き交う空間の中心に佇む立像は、独特な存在感を醸し出しています。

 

また、2017年には東京メトロのPR広告として、国立近代美術館のゴームリー作品と、女優の石原さとみさんがコラボしたポスター・中吊り広告も登場しました。

(国立近代美術館のある竹橋駅のPR広告でした⇨参考:東京メトロの広告サイト「Find my Tokyo」へ

 

作家は知らずとも、作品はなんとなく見たことがある、という方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

今回はそんな彼の作品を、その生い立ちと共に少し追ってみたいと思います。

 

文中に参考の外部リンクを掲載していますので、作品画像を併行してご覧になることをオススメします!

 

1.アントニー・ゴームリーの生い立ち

アントニー・ゴームリーは1950年8月30日、ロンドンに生まれました。

 

彼の父は敬虔なカトリック教徒で、また製薬会社を経営する実業家でした。
彼の父の製薬会社は、ペニシリンの発見者であるAlexander Flemingと、ペニシリンを商用販売する契約を締結した最初の会社であり、ゴームリー家は非常に裕福な家庭でした。

 

アントニー・ゴームリーは、そんな一家の7人兄弟の末っ子としてこの世に生を受け、美術好きの父の影響で、週末に大英博物館やナショナルギャラリーに通うなど、幼少期から美術に数多く触れる生活を送ります。

 

ゴームリーは1968年にケンブリッジ大学トリニティカレッジに入学。
美術史・考古学・人類学の学位を取得し1971年に卒業すると、インド・スリランカへと旅し、3年間、仏教を学びます。
その後ロンドンへ戻り、多くの大物アーティストを輩出した名門・ゴールドスミス美術学校と、スレイド美術学校でアートを学びます。

 

2.初期の作品

彼のアーティストとしてのキャリアは1981年、Whitechapel Art Galleryでの個展から始まります。

 

この個展を催したのは、当時このギャラリーのディレクターで、
後にテートギャラリー館長を長らく(1988年〜2017年)務めることとなったNicholas Serotaです。

ゴームリーは早期から、その才能を業界の大物に見出された作家でした。

 

この個展で展示された作品のひとつが、8,640枚の食パンを積み重ねて並べた”BED”というタイトルのインスタレーションです。

 

■BED (1980-1981)

 

大量の食パンの塊の中心部分は、ゴームリーが彼の身体の形そのままの分だけ食べてくり抜いており、“空”の空間となっています。

参考:ゴームリーの公式サイトの作品掲載ページへ

 

パンはイエスの「体」を象徴するモチーフです。前述の通り、彼の父親は厳格なカトリック教徒であり、また彼自身ベネディクト教(カトリック教会最古の修道会)の全寮学校に通っていたこともあり、彼の作品には彼の宗教的な思想が反映されていることも多いように見受けられます。

 

この作品はTate Galleryによって購入・収蔵されており、TateのHPにも詳しい解説が掲載されています。

 

参考:Tate Galleryの解説ページへ

 

3.代表作など

ゴームリーは1994年にターナー賞を獲得し、その名を広く知られることとなります。

 

その後も、1999年にサウスバンク賞のビジュアルアート部門、2007年にバーンハード・ヘイリガー賞彫刻部門、2013年に高松宮殿下記念世界文化賞彫刻部門等、数々の賞を受賞しています。

 

また、母国イギリスで1997年に大英帝国勲章を贈られたほか、2014年にナイトの爵位を受賞しています。

 

そんな彼の作品の代名詞とされているのが、彼自身を型取った鋳型で制作した彫刻です。

 

そして、その中でも最も重要な作品のひとつが、“ANOTHER PLACE”というインスタレーションです。

 

■ANOTHER PLACE (1997)

 

この作品は現在、イギリスのリバプールにあるクロスビービーチという海岸に恒久展示されているのですが、その海岸沿い2.5km、また沖に向かって1kmのエリアに、100体の彼の立像が点々と並べられるという壮大なインスタレーションです。

 

参考:ゴームリーの公式サイトの作品掲載ページへ

 

また、”FIELD”というプロジェクトも重要な作品の一つです。

 

■FIELD (1989-2003)

 

このプロジェクトでは、共同制作者と共に数十万体の小さな土の人形を作成し、その人形でひとつの空間を埋め尽くすという試みを世界各地で行っています。

 

参考:ゴームリーの公式サイトの作品掲載ページへ

 

このように、彼の作品の多くは「体」、「体と環境」、「体と空間」といったテーマを主題として制作されます。

 

日本では、オペラシティ初台のほか、東京国立近代美術館、札幌芸術の森野外美術館、霧島アートの森などでその作品を見ることができます。
(展示情報については変更されている可能性がございますので、事前にご確認ください。)

 

現在もアートマーケットの第一線で活躍し続けるアントニー・ゴームリー。

現代彫刻を語る上で、彼の作品は是非押さえておきたいものです。

 

名古屋市美術館

「接近Ⅴ」(名古屋市美術館)

 

神奈川県立近代美術館葉山

「TWO TIMES」(神奈川県立近代美術館葉山館)

 

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